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二種冷凍機械責任者試験の学識は、最近では計算問題が出題されなくなってしまいました。その分、一種冷凍機械責任者試験の学識問題が以前の二種のレベル に近づいている感じもします。ようするに、わりと簡単になってきたということです。
ただ、あまく見ると年度によっては、引っ掛けや意外な落とし穴があって、試される?ような問題があるので注意が必要で気を引き締めなければなりません。(2009年記す)
熱問題の一つのポイントは、有効内外伝熱面積比を頭に入れているかどうかです。あなたがこれを理解しているか採点者は見ています(たぶん)。
超古いですが平成4年度の問3の問題をしてみましょう。
SI単位ではないのでややこしいかもしれませんが・・・・時間があったら挑戦してみてください。
この問題の詳しい解き方は、省きます。最初に熱通過率Kを求め、算術平均温度差を求め、それから凝縮温度を求め、 そして表から飽和圧力が適当かどうかを判断するということになります。
この問題の一番のポイントは、算術平均温度差を求めるときに表面積を使いますが、冷却水側伝熱面積 A = 10m^2をそのまま使うと間違いになります。(後述してあります。)
ローフィンチューブは、管の冷媒側にフィンを付けて熱伝達率を大きくしています。ここで、有効内外伝熱面積比 mは、
とすると、
mは1より大きくなります。
これは、フィンを付けて伝熱面積を拡大した側を基準として伝熱面積や熱通過率を表すことにしているからです。つまり、表面積(伝熱面積)の大きいほうを 分子に持ってきて有効内外伝熱面積比を出しましすから1より大きくなるのです。
上記の解説は、下記に引用したところを参考にしました。(赤文字は分かりやすくするため、実際は黒です。)
一般に、フィンを付けて伝熱面積を拡大した側(伝熱管の外表面)を基準として、伝熱面積及び熱通過率の値を表す。 すなわち、ローフィンチューブの場合には、外面がフィンにより拡大されているので、外表面基準の熱通過率Koとして式(5.26)を用いる習慣になっている。
ここで、赤字の部分が「SIによる上級冷凍受験テキスト:日本冷凍空調学会(平成19年11月30日 第6次改訂)」では、削除されています。
一般に、伝熱管の外表面を基準として、伝熱面積及び熱通過率の値を表す。 すなわち、ローフィンチューブの場合には、外面がフィンにより拡大されているので、外表面基準の熱通過率Koとして式(5.26)を用いる習慣になっている。
この修正はどこかに掲載されているかもしれませんが、受験者の方から「伝熱面積の拡大は関係ないのでは」というメールを頂き、 二冊のテキストを見比べてみて分かりました。
修正の理由は私(echo)が愚考したことですが、下記の方に「インナーフィンチューブ」の説明があります。これの基準面をどうするかで矛盾が生じてしまったからかもしれません。) 「一般に」とか「習慣」とかの語句がありますので曖昧なところがあるような気がしています。(ということは、曖昧な「インナーチューブ」の問題は出題されないかもしれません。
上記訂正(取消線)の一文は取り消したままにしておきます。(mは1より大きいと覚えておけばいいような気もします…。)
上記の問題は冷却水側の伝熱面積Aと指定されていますが、Ao = m × A として、外側つまり冷媒側伝熱面積で計算しないとなりません。ですので、この問題の場合 Φk=K・A・Δtm という公式の表面積Aは、10m^2ではなく35m^2(3.5×10)で計算します。
この辺は、頭に入れておいてください。今よくわからなくても、この先過去問をガンガン解いているうちにわかるようになりますから安心してください。
図は、水冷シェルアンドチューブ凝縮器に用いられているローフィンチューブの概略図です。 管外にローフィンを設けて表面積を大きくしています。
管外が冷媒、管内が冷却水です。これ重要
管外にフィンを付けて表面積を大きくしています。水冷シェルアンドチューブ凝縮器のように水垢はたまりません。 フィンに汚れが着くけれど、熱伝導抵抗が小さいので無視するそうです。
蒸発器には「霜」が着きます。霜が有るときと無いときの違いを求める問題が出題されたりしています。 (11月試験平成17年度)
インナーフォンチューブの問題は出題されていません(2007年8月15日記す)が、書いておきます。
ローフィンチューブと逆で管外に冷却水、管内に冷媒が流れています。mは表面積の広い内側が基準になります。
『上級 冷凍受験テキスト:日本冷凍空調学会』<9次:P102左5行目>(<8次:P98左真ん中辺り>)に、 その熱通過率(管外表面積基準)
と記されています。内側の方が面積が広いと思いますので、内側面積が分子で基準の外側が分母になれば、mは1より大きくなります。
下記に引用。
<略>インナーフィンチューブを使用することが多いが、その熱通過率(管外表面積基準)は近似的に次式で表される。
<式 略>
ここに、
αw:<略>
m:インナーフィンチューブの有効内外伝熱面積比で、一般にm = 2.2~3.4
f:<略>
αr:<略>
である。
引用元 : 「SIによる上級冷凍受験テキスト:日本冷凍空調学会」(平成13年11月30日 第3次改訂)P85、(平成19年11月30日 第6次改訂)P85、(平成23年12月07日 第7次改訂)P96、(平成27年11月20日 第8次改訂)P98、(令和4年11月18日 第9次改訂)P102
ということで、下記のように修正しておきます。
ローフィンチューブと逆で管外に冷却水、管内に冷媒が流れています。インナーフィンチューブの場合は内側が表面積が広い(であろう)ですが、 外側を基準として考えるようです。
一般にm = 2.2~3.4
冷凍能力Φoと凝縮負荷(放熱量)Φkなどを求める式をざっと書いておきます。伝熱量Φ、温度差、面積、などなどは凝縮器、蒸発器、冷却塔のそれぞれのものに置き換えてください。
この3つの式は覚えてください。ガンガン過去問やると自然にわかると思います。
伝熱量だけではなく伝熱面積を求めたり、温度差、熱通過率、それから冷却管の長さまで…。ま、いろんな方向から出題されまする。
算術平均温度差の詳細は省略(参考書を読んでください)ま、式だけは必ず覚えておきましょう。(否応なしに覚えてしまうと思います)
参考) 『上級 冷凍受験テキスト:日本冷凍空調学会』<9次:P84右側 (近似的には,(算術平均温度差を用いた場合))>、<8次:P84右側 (または,(算術平均温度差を用いた場合))>
参考) 『上級 冷凍受験テキスト:日本冷凍空調学会』<9次:P105左側><8次:P101右側上>
さて、前置きはこのぐらいにして次のページからは代表的な過去問をガンガン解いてみましょう。
【2016/10/22 新設】