EchoLand-plus
容量制御時「冷凍能力80%」からの考え方と、ホットガスバイパスの混合点ヒートバランス(熱収支)の組み立てが、ポイント。
問2 下図は、負荷減少時に圧縮機吐出しガスの一部を、膨張弁直後の低圧側にホットガスバイパス弁を通して絞り膨張させ、容量制御する小形R410A冷凍装置の略図で、下記の理論冷凍サイクルの条件で全負荷運転されている。
負荷が減少したため容量制御運転を行い、装置の理論冷凍能力を全負荷時の80%にした。これについて、次の(1)~(4)に計算式を示して答えよ。
ただし、容量制御運転は、状態点1、2、3および4の冷媒の状態ならびに圧縮機吐出しガス量が全負荷時と変わることなく、できるものとする。
(20点)
(1) 全負荷時の冷媒循環量qmr(kg/s)を求めよ。
(2) 容量制御時の蒸発入口の冷媒の比エンタルピーh6(kJ/kg)を求めよ。
(3) 容量制御時のホットガスバイパス量バイパス量qp(kg/s)を求めよ。
(4) 容量制御時の理論成績係数(COP)th.Rpを求めよ。
全負荷時の冷凍能力Φoは、図のようにバイバス回路がない単純な冷凍装置になります。
全負荷時の説明図
よって、基本式は、 Φo=qmr(h1-h4) ですね。
さっさと、qmrを計算しましょ。
答え 0.494(kg/s)
今までの過去問では、バイパスの冷媒量を20%にしたなど形式で問われましたが、この設問では全負荷時の冷凍能力(Φo)を80%にして容量制御をしたとなっています。 単純に下図のa点の熱収支式を組み上げることではなく、少々頭の体操的な問題です。
(1)で求めた全負荷時冷媒循環量qmrでの、冷凍能力Φoは、
Φo=qmr(h1-h4) ですね。
ここで、設問では冷凍能力(Φo)を全負荷時の80%とあるので、次の式が成り立ちます。(点6が設問の容量制御時の蒸発器入口比エンタルピーh6となります。)
0.8×Φo=qmr(h1-h6)
つまり、
0.8×qmr(h1-h4)=qmr(h1-h6)
qmrが消えて、
0.8×(h1-h4)=h1-h6
よって、
h6=h1-0.8×(h1-h4)
この赤字式が模範解答にはいきなり出現します。本番の解答でも 容量制御時は次の式が成り立つ
などと一言書いて、この式を記せば100点!
一気に行きましょ。ここに、h4=h3=257
h6=419-0.8×(419-257)=419-129.6=289.4≒289
答え 289 (kJ/kg)
さて、ここでa点の熱収支式を組み立てましょう。
左辺に入るもの、右辺に出るものをまとめます。
qph5+h4(qmr-qp)=qmrh6
この式さえできれば、100点!
では、変形して
ここに、h4=h3、h5=h2
数値代入しましょ。
答え 0.0735 (kg/s)
2通りの解答を記しておきます。
Φop、Φo、(COP)th.R、(COP)th.Rp、h6 、h4の使い分けに注意してください。
設問の容量制御時の冷凍能力をΦopとすると、
Φop=qmr(h1-h6) と、なります。
よって、このときの理論成績係数(COP)th.Rpは、
数値代入しましょ
設問より、容量制御時の(COP)th.Rpは、全負荷時の(COP)th.Rの80%であるから、次式が成り立つ。 参考:(『上級 冷凍受験テキスト:日本冷凍空調学会』<9次:P22(2.17)式><8次:P22(2.17)式>)
(COP)th.Rp=(COP)th.R×0.8
(COP)th.Rを、一応、記しておきましょう。(h6 が、h4 であることに注意。)
では、数値代入して一気に。
echo的には、方法 1が簡単に思えるのですが、方法2は設問の題意にかなっているように思えます。それになかなかスマート感があります。(協会の模範解答では、方法2が記述されています。)
【追記】 令和5年度検定試験問2に同様の問題が出題され、模範解答は方法 1が記述されました。
答え 2.45
容量制御時の「冷凍能力を80%」にする設問は初めてと思われる。なので、けっこう戸惑った感があります。ぅ~ん、これからも出題されるのかな?
【2020(R02)/12/04 新設】
P22(2.7)式→
P22(2.17)式(2023(R05)/05/31)