1種冷凍学識計算講習検定試験攻略-問1:令和2年度

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コンパウンド圧縮機二段圧縮一段膨張冷凍装置です。

 平成27年度と同等のコンパウンド圧縮機の問題です。気筒数比がポイント。

第一種冷凍機械責任者試験 令和2年度(講習検定試験)

問1 下記仕様のコンパウンド圧縮機を使用したR404A二段圧縮一段膨張冷凍装置があり、 その理論冷凍サイクルは以下のとおりである。この装置を運転して50kWの冷凍能力を得たい。このとき、次の(1)~(5)について、それぞれ解答用紙に計算式を示して答えよ。
 ただし、圧縮機の機械的摩擦損失仕事は熱となって冷媒に加わるものとし、機器および配管と周囲との間で熱の出入りはないものとする。

(20点)

(理論冷凍サイクル)
 低段圧縮機吸込み蒸気の比エンタルピー           h1 = 354 kJ/kg
 低段圧縮機吸込み蒸気の比体積               v1 = 0.099 m3/kg
 理論断熱圧縮後の低段圧縮機吐出しガスの比エンタルピー   h2 = 376 kJ/kg
 高段圧縮機吸込み蒸気の比エンタルピー           h3 = 371 kJ/kg
 高段圧縮機吸込み蒸気の比体積               v3 = 0.034 m3/kg
 理論断熱圧縮後の高段圧縮機吐出しガスの比エンタルピー   h4 = 394 kJ/kg
 中間冷却器用膨張弁直前の冷媒液の比エンタルピー      h5 = 250 kJ/kg
(圧縮機仕様)
 低段側と高段側の気筒数比                a = 2
 体積効率(低段側、高段側とも)             ηv = 0.75
 断熱効率(低段側、高段側とも)             ηc = 0.70
 機械効率(低段側、高段側とも)             ηm = 0.90

 (1) 低段側冷媒循環量qmro(kg/s)と高段側冷媒循環量qmrk(kg/s)との比qmro/qmrkを求めよ。

 (2) 蒸発器用膨張弁手前の冷媒液の比エンタルピーh7(kJ/kg)を求めよ。

 (3) 高段冷媒循環量qmrk(kg/s)を求めよ。

 (4) 凝縮負荷Φk(kW)を求めよ。

 (5) コンパウンド圧縮機の実際の駆動軸動力P(KW)を求めよ。

なにはともあれ、概略図と(線図)を描きましょう。

第一種冷凍機械責任者学識【講習検定】令和2年度問1線図(二段圧縮一段膨張) 第一種冷凍機械責任者学識【講習検定】令和2年度問1概略図(二段圧縮一段膨張)

数値を書き加えるとウッカリミスが減るかもね。概略図もサクッと描けられれば鬼に金棒です。 目をつぶっても描けるぐらいなら合格!

(1) 低段側冷媒循環量qmro(kg/s)と高段側冷媒循環量qmrk(kg/s)との比qmro/qmrkを求めよ。

 考え方はH27年度(1)と同じです。模範解答(KHKの)に沿って記しておきましょう。

 設問を読みこの基本式が出てくれば合格。(基本式は2冷レベル)

V・ηv = qmr・v基本式。
 V : ピストン押しのけ量 qmr : 冷媒循環量 ηv : 体積効率 v : 比体積

気筒数比aの基本式。
 a : 気筒数比 VL : 低段側ピストン押しのけ量 VH : 高段側ピストン押しのけ量

 よって、設問を基本式に当てはめると

qmroとqmrkの基本式。となる。

 比qmro/qmrkは、
比qmro/qmrkその1。 比qmro/qmrkその2。

 では、数値代入しましょ。
比qmro/qmrkその2へ数値代入。

  答え 0.687

(2) 蒸発器用膨張弁手前の冷媒液の比エンタルピーh7(kJ/kg)を求めよ。

 なにわともあれ、中間冷却器の熱収支式を組み立てましょう。これが、この問1のポイント。

コンパウンド圧縮機二段圧縮一段膨張の中間冷却器概略図

 左辺に入るもの、右辺に出るものでまとめます。

  qmrkh5 + qmroh'2 = qmrkh3 + qmroh7
   (h2は、h'2であることに注意)

 qmroを左辺、qmrkを右辺にまとめます。

  qmroh'2 - qmroh7 = qmrkh3 - qmrkh5

  qmro(h'2 - h7) = qmrk(h3 - h5)
  ハイ、qmroとqmrkを含んだ熱収支式の出来上がり。

 ここで、h7を求めるには(1)の答えを利用するために、上記の熱収支式から次のように表す。

熱収支式をqmro/qmrkを含む式に変形
この式にすべての与えられた数値を代入すればh7が求められます。 (長々と記述していますが本番では余白が少ないですから、いきなりこの式を書いても良いですよ。練習してください。)

 では、h'2を求めましょう。

h2´説明用線図

h2´を求める式に数値代入。

 ここで、qmro/qmrkは(1)で  0.687 と求めたので、与えられた数値と一緒に熱収支式に代入します。

qmro/qmrkの数値を式に与えられた値と一緒に熱収支式に代入
 途中の式は省きます。
 h7=212.87≒213

  答え 213 (kJ/kg)

(3) 高段冷媒循環量qmrk(kg/s)を求めよ。

 さて、設問で与えられた仕様と今までの解答を含めての頭の体操ですね。

 冷凍能力50kW(Φo)が指定されていますので、(2)で求めたh7を使って、qmroが求められそうです。
  Φo=qmro(h1-h7)(← 2冷レベル)

一気に行きましょう。
qmroを求める式に数値代入一気。

(1)で求めたqmro/qmrkの式 と、(1)で求めました。

(1)で求めたqmro/qmrkの式に求めたqmro数値を と、なります。

 qmrkは、

数値代入してqmrkを求める

  答え 0.517 kg/s

(4) 凝縮負荷Φk(kW)を求めよ。

 (4)は2冷レベルのサービス問題です。(3)まで解けたあなたはルンルン気分のはずです。

 Φkは、Φk=qmrkh'4 -h5)ですね。(← 2冷レベル)

 では、h'4を求めましょう。

h4´とΦkの説明用線図

h4´を求める式に数値代入。

 よって、

 Φk=qmrk(h'4 - h5)
  = 0.517 × (408 - 250)
  = 81.686
  ≒ 81.7

  答え 81.7 kW

(5) コンパウンド圧縮機の実際の駆動軸動力P(kW)を求めよ。

 せっかく、Φkを求めたのですからスマートに行きましょう。

 P=Φk-Φo (← 3冷レベル)

 P=81.7-50=31.7

  答え 31.7 kW

コメント

 (1)の気筒数比を把握しているかがポイント。(1)ができなければ、撃沈。(2)は熱収支を把握していなければ難問。講習検定試験なので講習会で勉強するでしょう。(3)~(5)は、2冷3冷レベルのサービス問題でした。

訂正箇所履歴

【2020(R02)/11/02 新設】

  • 「h2´」などの「´」の位置をできるかぎり「h'2」に変更してみた。 (2021(R03)/03/14)
  • (3)(← 2例レベル)→(← 2冷レベル)に修正。(2021(R03)/04/25)
  • (4)(h'4 -h3)→(h'4 -h5)に修正。(2021(R03)/04/25)