1種冷凍学識計算11月試験攻略-問3:令和3年度

EchoLand-plus

硬質ポリウレタンフォーム製断熱材を用いたブライン搬送用配管

 配管用断熱材計算は、初めての問題と思われ…。

第一種冷凍機械責任者試験 令和3年度 問3(11月試験)

問3 下図のように硬質ポリウレタンフォーム製断熱材を用いて、銅管を断熱し、ブライン搬送用の配管を制作した。以下の仕様および使用条件でこの配管を使用したとき、断熱材内表面の温度 t1(℃)を解答用紙の所定欄に計算式を示して答えよ。ただし、配管の半径方向にのみ、一様に熱が流れるものとする。
 必要であれば、ln 2 = 0.69 、ln 3 = 1.10 、ln 5 = 1.61 を用いよ。

(20点)

第一種冷凍機械責任者試験問3(令和3年度)の問題図

(仕様および使用条件)
 銅管の外径および断熱材の内径           D1 = 6 mm
 断熱材の外径                   D2 = 30 mm
 外気温度                     ta = 30.2 ℃
 断熱材の外表面温度                t2 = 25.2 ℃
 断熱材の外表面(外気側)の熱伝達率         αa = 10 W/(m2・K)
 断熱材の熱伝導率                 λp = 0.030 W/(m・K)

円筒壁の熱伝導について

2冷の「学識」問題

 問3の熱問題で、「蒸発器」と「凝縮器」以外の問題といえば「冷蔵庫パネル」が定番でした。今回はじめて「円筒壁」が出題されました。

 2冷の「学識」の問4では「円筒壁」が平成25年度に出題され、令和になって元年と3年度に出題されました。その流れで?1冷の学識にも登場したのでしょう。

 「2種冷凍「保安・学識」攻略」の「円筒壁」のリンクを張っておきます。https://www.echoland-plus.com/23hoagaku/2hogaku/2hoga-dennetsu1-1.html#entou


 せっかくなので、2冷問題(リンク部分)もココに貼り付けておきましょう。(問題の前の、図や式などはechoが作成したものです。)

熱流束φ

 テキスト<9次(8次):P74左 (6.1)式>

円筒壁の熱流束φ説明図
円筒壁の熱流束φ説明図

  • 半径r方向にのみ一様に熱が流れている。
  • 温度勾配(dt/dr)
  • 熱伝導率λ
  • 単位時間あたりの伝熱量Φ(kW)
  • 円筒壁の長さL
  • 熱流束φは、
     熱流束φ=(kW/m2

・平板の厚さ方向(x方向)にのみ、一様に熱が流れる場合、位置xにおける温度をtとすると、熱流束は温度勾配(dt/dx)に比例する。また、円筒壁を半径方向(r方向)にのみ、一様に熱が流れる場合、位置rにおける温度をtとすると、熱流束は温度勾配(dt/dr)に比例する。 R03ga/04 答え

【◯】 この問題はココ。前半の「平板」は前述した「フーリエの法則」ですね、後半の「円筒壁」は上図を参照にしてちょうだい。(式の把握は必須になってます。)

 ・平板の熱流束φ(フーリエの法則
   φ = -λ(dt / dx) (kW/m2)

 ・円筒壁の熱流束φ
   熱流束φ=(kW/m2)

伝熱量Φ

 テキスト<9次(8次):P75左 (6.4)式>

円筒壁の伝熱量説明用の図
円筒壁の伝熱量説明用の図

  • 円筒壁を半径方向(r方向)にのみ一様に熱が流れる場合、円筒の内壁面(半径r1)および外壁面(半径r2)における温度をそれぞれt1、t2とすると、半径rが大きくなる方向への円筒壁の熱伝導による伝熱量Φは、(t1-t2)/(ln r2-ln r1)に比例する。
  • 伝熱量Φ=(kW)

・円筒壁の熱伝導による伝熱量Φは、熱の流れる方向を半径γが大きくなる方向とすると、(t1-t2)/(lnr2-lnr1)に比例する。ただし、内壁面を1、外壁面を2とする。 H25ga/04 答え

【◯】 な、何これ、何、こ、この問題…。と、思う問題。
 テキスト的には<9次(8次):P75左 (6.4)式>辺りだけども、分からないワ。御愁傷様。  (学識の計算問題を2問確実にGET!しておかないと、こういう問題で点数が減っていくん(場合があるん)だ。)ご健闘をお祈りします。

・円筒壁を半径方向(r方向)にのみ一様に熱が流れる場合、円筒の内壁面(半径r1)および外壁面(半径r2)における温度をそれぞれt1、t2とすると、半径rが大きくなる方向への円筒壁の熱伝導による伝熱量Φは、(t1-t2)/(ln r2-ln r1)に比例する。 R01ga/04 答え

【◯】 平成25年より6年後、テキスト<9次(8次):P75左 (6.4)式>が、 伝熱量Φ= またもや出題された。1冷凍では実際に計算するだろうが、2冷の場合は式の意味を問われる。この先、このような問題が増えるのだろうか。健闘を祈る。(2019(R1)/12/21記ス)

 2冷では、このような問題が出題されています。さてと…。

断熱材内表面の温度 t1(℃)を計算して求めよ。

ニュートンの法則

 参照 : テキスト<9次(8次):P75右 (6.5)式>

固体と流体の熱伝達
固体と流体の熱伝達
  • Φ = αA(tw - tr)
  •   Φ : 伝熱量 (KW)
  •   α : 熱伝達率 [kW/(m2・k)]
  •   A : 伝熱面積 (m2)
  •   tw : 伝熱壁面温度 (℃)
  •   tr : 周囲流体温度 (℃)

 単位面積あたりに伝わる伝熱量 Φ は、伝熱面積 A と (tw - tr) に比例する。これを、ニュートンの法則という。

設問を「ニュートンの法則」にあてはめると

 参照 : テキスト<9次(8次):P75左 (6.4)式>

ブライン搬送用の配管 概略図
ブライン搬送用の配管 概略図

  Φ = αaA(ta - t2)

 ここで、A = πD2L

  Φ = αa (πD2L) (ta - t2) …(1)

 これを、(1)式とします。

ブライン搬送用の配管 断面図
ブライン搬送用の配管 断面図

 設問の配管断面の半径と直径の関係式は、
  ブライン搬送用の配管断面の半径と直径の関係式 …(2)


円筒の伝熱式

 テキストを参照して、円筒の伝熱量 Φ の計算式を設問に当てはめて組み立ててみましょう。

 設問のブライン搬送用配管の温度分布イメージはこんな感じ。

ブライン搬送用配管の温度分布イメージ図
ブライン搬送用配管の温度分布イメージ図

ブライン搬送用の配管 断面図
ブライン搬送用の配管 断面図

 伝熱量 Φ は、(参照 : テキスト<9次(8次):P75左 (6.4)式>)

   ブライン搬送用の配管の伝熱量を求める式 r2/r1
   注)設問は t2>t1 であるから (t2 - t1) である。

 (2)式をあてはめると、

   ブライン搬送用の配管の伝熱量を求める式 D2/D1

 ここで、Φを(1)式を使って組み込みます。

   ブライン搬送用の配管の伝熱量を求める式 D2/D1 に(2)式を組み込む

 π と Lを消します。

   ブライン搬送用の配管の伝熱量を求める式 (3)式 …(3)


 では、(3)式より t1 を求めましょう。

   ブライン搬送用の配管の伝熱量を求める式 (3)式 …(3)

   ブライン搬送用の配管の伝熱量を求める(3)式を変形してt1を求める式

 この式の数値はすべて与えられていますので、これで t1 を求められます。


 では、数値代入しましょ。

   ブライン搬送用の配管の伝熱量を求める(3)式を変形してt1を求める式に数値代入する式。

    注)ln30/6=ln5 が 1.61 の説明 設問の指定により、ln5 = 1.61 を用いる。

    注)D2 = 30 (mm) は、0.03 (m) に換算して計算すること。

   ブライン搬送用の配管の伝熱量を求める(3)式を変形してt1を求める式に数値代入し計算する式。


  答え  t1 = - 15.0(℃)


 この問題の要点は、円筒の熱計算式を把握しているかです。円筒の熱計算は初めての問題でした。今後も出題されるでしょう。(2022年(R04)6月26日記ス)

 いつもながらですが、計算はくどくどと記しています。本番では、思い切って削除しスマートな記述にしてください。


 ご健闘をお祈りします。

訂正箇所履歴

【2022(R04)/06/19 新設】

  • フォントなどページ全体を見直し。(2023(R05)/01/28)
  • 『上級 冷凍受験テキスト』9次改訂版に対応。(2023(R05)/06/28)